村上春樹風 桃太郎
みなさんこんばんは。
村上春樹風 桃太郎
昔、とは言ってもだいぶ昔のことなのだけれど、
僕はある町(名前もない小さい町だ)に妻と二人で暮らしていた。
多くの夫婦がそうであるように、
僕たちの間にもいささかの問題があった。
他人からしてみれば些細な問題かもしれないのだけれど、
妻はよくそのことで自分自身を責め、
彼女が本来持つ良さを損なっていたと思う。
それは2月に突然降る冷たい雨のように僕たちを苦しめた。
「あなたはどう思うの?私たちに子供がいないことについて」
と妻が言った。
そのとき僕たちはボンゴレ・ビアンコといんげんのサラダを、
食べ終え向かい合って座っていた。
テーブル越しの妻はなんだかいつもより疲れているように見えた。
「ねぇ、最初に言っておきたいんだけど」
と僕は言った。
「僕は特に子供が好きじゃない。
それに子供がいないことは夫婦の自由な選択の結果であって、
君が苦しむべき問題じゃないと思う」
妻は頬杖をついて僕の方をじっと見つめ、
(あるいは僕の後ろにある流氷の写真を見ていたのかも知れない)
静かに微笑んだ。
まるで、そんなことを聞いたんじゃないという風に。
「明日、川に行こうと思うの」と妻はそっと言った。
「悪くない。いつ出発する?」と僕は言った。
「ごめんなさい、私、一人で行きたいの。あなたは山に行って」
「オーケー」
僕は早朝のマクドナルドの店員のように努めて明るく答えた。
(村上春樹「桃を巡る冒険」)
村上春樹さん好きなので敢えて言いますと、
クソワロタw
借金返済生活にも、
ちょっとのユーモアは必要と感じる今日この頃です(・∀・)b